「指差し呼称」していますか?ミスの発生率を減らす効果があります
指差呼称の効果
臨床工学技士の業務は、薬品の準備をしたり、呼吸器や透析回路を組み立てたりなど、生命に関わる重要な業務を行ないます。これらの業務は、もしミスを犯すと患者に対して重篤な影響を与えてしまいます。
そのため、作業後にチェックリストを用いて点検をしたり、他のスタッフにダブルチェックをしてもらったりします。
ただ、ダブルチェックを行なってもミスを見落とすこともあり、それにより医療事故が発生してしまう恐れがあります。ミスを防ぐためには、集中して質の高い確認をする必要があります。
効果的な確認方法に、指差呼称という方法があります。病院の研修でも時々行なっているので、既に実践している方も多いかもしれません。今回は、改めて指差呼称の方法と、効果について紹介します。
指差呼称とは
指差し呼称とは、点検時に、点検箇所を指を指して、『○○よし!』と声に出して確認する方法です。
もともとは、日本国有鉄道の蒸気機関車の運転士が、信号確認のために行っていた安全動作でしたが、現在では鉄道だけでなく、建築、製造業、医療現場など、多くの分野で行なわれています。
指差呼称の方法
一般的に、「指差呼称」は以下の手順で行われます。
(1)対象をしっかり見る
(2)対象を指で差す
・呼称する項目を声に出しながら、右腕を真っ直ぐ伸ばし、対象から目を離さず、人差し指で対象を指差します。
なお、指を差す際、右手の親指を中指にかけた「縦拳」の形から、人差し指を真っ直ぐに突き出すと、指差しが引き締まります。
(3)差した指を耳元へ
・差した右手を右の耳元まで戻しながら、「本当に良いか(正しいか、合っているか)」反すうし、確かめます。
(4)右手を振り下ろします
・確認できたら、「ヨシっ!」と発声しながら、対象に向かって右手を振り下ろします
<厚生労働省 職場の安全サイトより引用>
実際、医療現場でここまではりきってしている人はあまり見かけませんが、自分だけに聞こえる声で、指差呼称をするのでも十分に効果があります。
指差呼称の効果
1994年の財団法人 鉄道総合技術研究所のボタンの操作をする試験で指差呼称の効果を検証しています。
それぞれ、ボタンの押し間違いの確立は以下のようになりました。
確認方法 誤りの確率
指差、呼称の
どちらもしなかった場合 2.38%
指差確認のみをした場合 0.75%
呼称確認のみした場合 1.0%
指差呼称をした場合 0.38%
指差呼称をした場合の誤りの確率は、0.38%とどちらもしなかった場合と比べて、6.2倍以上ミスが減っています。
広島大学大学院保険学研究科の指差呼称の研究(確認作業に「指差し呼称」法を用いた時の前頭葉局所血流変動の比較)においても、指差呼称をすると前頭葉の血流が増加して注意力・集中力が上がっていることが確認できたそうです。
このように、科学的にも指差し呼称の有効性が証明されています。