昔あるところに幼い女の子と女の子といる時だけ動き喋る事が出来る人形がい

昔あるところに
幼い女の子と
女の子といる時だけ
動き喋る事が出来る人形がいました。


二人は仲良しで
心臓に病気を抱えて
部屋から出ることが
出来ない女の子にとって
その人形は唯一無二の
親友でした。


女の子は人形に
『お願い聞いてくれる？』
と簡単な願いを言い、
人形はそれに
『君のお願いなら仕方ないね』
と笑顔で返す日々を
送っていました。


女の子には夢がありました。
年に一度大きなお城で開かれる舞踏会で
王子様と踊ることです。


女の子が寝る前に
父親が話してくれる
舞踏会のお話で
彼女の夢はどんどん
大きくなっていきました


その年の舞踏会の夜

女の子は人形に
お願いします。

『私と一緒に舞踏会に行きましょう？』

人形は悩みましたが

『君のお願いなら仕方ないね』

と 一緒に舞踏会が
開かれている お城に
忍び込むことにしました


運良く忍び込むことに
成功した二人

女の子は
呼ばれてもいないし
貴族でもないので

悔しいけれど
人形に諭され
陰に隠れて 人形と
踊ることにしました。

紛いなりにも
夢が叶うのです。

しかし
踊ろうとした瞬間
女の子は胸を押さえ
始めました

病気が女の子を
襲ったのです。


女の子が倒れた拍子に
一緒に倒れた花瓶の割れる音が響き
直ぐに人が来てくれたことに依って
女の子は一命をとりとめました


ですが女の子の
回りに人が集まったとき
小さな人形は
誰かに蹴られ 誰にも
見つかりそうにない
物陰に入ってしまい
二人は離ればなれに
なってしまいました。

深夜
女の子の家の彼女の
部屋には
熱に浮かされている少女と その父親の姿がありました。

父親は天に向かい
神に乞います

『この子は生きさせてやってください。 母を早くに亡くし 可哀想な この子の願いを どうか 叶えてあげてください。 この子の城に忍び込んだ罰は私が受けます。 だから この子の王子様と舞踏会で踊るという夢を 叶えられるよう 生きさせてやってください!!!!』


願いが届いたのか
女の子の荒い息が
スゥーッと落ち着いていきました

それをみて
ホッとしたのか
父親は看病疲れもあり
女の子の手を握りながら
眠ってしまいました。

数時間後
女の子が目を覚ましました
未だ 熱は引かず
いつまた病気が
再発するかも解りません

女の子は辺りを見渡します

側には優しい父親

…人形がいません。

女の子は慌てます

『きっとあのお城だわ』

女の子は父親の手を
離し おぼつかない足取りで お城に向かいました。

一方、お城では
人形がずっと動け動けと
もがいていました。



すると先程まで
動かなかった手足が動き
言葉を発せるようになったのです

人形は驚きました

『女の子が近くにいる』



少し後 目の前に
息を切らして今にも
倒れそうな女の子が
現れました。


人形は女の子に
怒ります。


しかし女の子は
『ずっと友達でいてってお願いしたのは私だもの。貴方を一人にしたら約束を破ってしまうことになるでしょう？』

そう呟きました。


そして、
女の子はお願いします。

『ねぇ、また私と一緒に踊ってくれる？』

人形は頭を振ります
そんなことを今すれば
女の子が死んでしまうことは解りきっているからです。


それを見て 女の子は
もう一度真剣な目で
お願いします。

女の子にも
解っていたのです。

もう永くないことが。

『お願い聞いてくれる？』

真剣な問いに

『ズルいよ…』

と 涙を流せない人形


『君のお願いなら仕方ないね…』


『ありがとう。私の王子様…』


二人は踊りました。
踊りました。


翌朝そこには
踊り 果てた二人が
仲良さそうに寄り添っていたのでした。