さて教科書研究における「悪魔の囁き」について狼独り言を述べてみたい。「教科書は生徒の学力の違いをもたらすか」という囁きである。教室での教科書依存は日米とも90%以上であり,授業で教科書が大きな役割を果たしている。他方で学校はアカウンタビリティを問われ,教育委員会は学力についても責任を追及される。学力の国際競争はスプートニック・ショック以来顕著になり, T危機に立つ国家1は米国の「凡庸な教育」が経済の国際競争力の低下を招いたとして,国を挙げて教育改革に取り組ませた。21世紀はPISAショックが学力の国際競争を激化させている。世界の教育政策の核心は「教育における正義」から「国際競争力と学力」「教育の質の改善」にシフトしている。つまり世界の教育政策者たちは「学力の違いは何によって決まるのか(What Makes Difference?)」という問いの答えを求めている。