ディエン語の否定文には様々な種類があり、大きく分けて「部分否定」「全体否定」「二重否定」の3つに分類されます。部分否定は文中の特定の部分だけを否定する文で、本質的には肯定文といえます。全体否定はその名の通り、文全てが否定の意味である文のことです。二重否定は漢文のように、強調された肯定文ですが、一律肯定文だとは限らず、様々な用法が有ります。いずれにせよ二重否定は否定文に分類されます。
■部分否定
部分否定には否定冠詞か格変化で習う否格を用います。否定冠詞は冠詞の項で習いますが、修飾する名詞を否定する冠詞のようなものです。
Si rja kiznoi. (私は小説家じゃない)
否格とは印欧語族にもみられない格ですが、英語の“nobody”の様に、否定の助動詞を伴っていなくても、否定文に近い働きを示す(“nobody knew”で「誰も知らなかった」)ものです。
Vûra ja manganoi. (彼は漫画家ではない)
ここで注意したいのは、なぜ、部分否定として用いられているか、ということです。主語が三人称で人称変化が一人称の形だった場合、否定されません。
Vûra haemə je poŝe, toiyo. (彼がりんごを食べない、ということを知っている)
また、カンマで区切られた先は否定されません。
Jira kroiso, *kizeto. (俺は不眠で書くぞ)
*“kizas”の未来形。時制で習う。
文を読む時もカンマで、休止符を打つように読まないと、上記の文も「寝ないが書かない」といった意味不明なものに仕上がります。
■全体否定 -
全体否定はその名の通り、文全体を否定する否定文です。次のピリオドまで否定します。全体否定の文を作るには、否定の助詞“rosk”を使います。
Ho haemo luz heule rosk. (君らの食べ物は食べない)
助動詞は文末に置く決まりがあるため、普通は最後に置きますが、文の最初に置くことによって「否定」の意味を強調することができます。
Rosk ho haemo luz heule. (貴様らの食べ物なんて食わん)
意思疎通という点ではどこにおいても、いいのですが、若干ニュアンスが異なる部分があります。例えば、一番最後に置くよりも、最初に置くことによって、「否定」が強調されます。主語の後に置けば「主語が否定」であることを強調できます。
また、助詞“ros”も否定の意味で用いられます。こちらは女性が主に用いるものです。
Si ros alui le. (あなたのことは好きじゃない)
意味の違いは余りありませんが、ディエン語では、摩擦音が美しいとされていますので、女性は破裂音である“k”を発音しないほうが好ましいという考え方から生まれました。
■二重否定 -
ディエン語における二重否定の考え方は、「否定文を否定する」といったもので、すなわち、肯定文であることを意味します。二重否定文は漢文と同様に肯定文の強調です。二重否定文は主語の否格と、否定の助動詞を用います。
Gûra mewnaiy rosk! (それが楽しくないはずがない‼)
Rosk gûra mewnaiy! (楽しくないなどありえない!)
しかし、二重否定が否定を強調する時があります。否定の助動詞を文中に2つ置いた場合は否定文となります。肯定文にしたい場合は否格と否定の助動詞の2つを持ちいらねばなりません。
Rosk gû mewnaity rosk! (楽しいはずがない!)
また、否格を2つ置くことも否定の意味になります。ですが、否格の後に否定冠詞だったり、否定冠詞の後に否格だった場合は、肯定文となります。
Jira ekulnoira ja. (私は料理人ではない)
まとめると、同じ助詞や変化を一つの文に置くと、二重否定は否定文になる。ということです。