アイス-プラネット椎名誠 僕のおじさんは「ぐうちゃん」という。彼の名は津田由起夫、三十八歳。彼はいそうろう。 僕の母親の弟だ。いつも母に怒ら翻訳 - アイス-プラネット椎名誠 僕のおじさんは「ぐうちゃん」という。彼の名は津田由起夫、三十八歳。彼はいそうろう。 僕の母親の弟だ。いつも母に怒ら英語言う方法

アイス-プラネット椎名誠 僕のおじさんは「ぐうちゃん」という。彼の名は

アイス-プラネット
椎名誠


僕のおじさんは「ぐうちゃん」という。彼の名は津田由起夫、三十八歳。彼はいそうろう。
僕の母親の弟だ。いつも母に怒られている。学生のころに外国のいろんな所を旅していたらしく、気づいたときには僕の家に住み着いていた。そして、長いこと「ぐうたら」しているから、いつのまにか「ぐうちゃん」というあだ名になってしまった。でも、ぐうちゃんは変わった人で、そう言われるとなんだかうれしそうだ。それを見て僕の母はまた怒る。怒るけど「これ、ぐうちゃんの好物。」なんて言いながら、ご飯の支度をしているから母もちょっと変わっている。
僕の家は東京の西の郊外にあって、父の祖父が建てた。古い家だけれど、ぐうちゃんが「いそうろう」できる六畳間があって、そこでぐうちゃんは「ぐうたら」している。父は単身赴任で仙台にいて、週末に帰ってくる。ぐうちゃんがいると何か力仕事が必要になったときに安心だから、と言って、父はぐうちゃんがいそうろうをしていることを歓迎しているみたいだ。
ぐうちゃんは、家にいるときはたいてい本を読んでいるか、唯一のタカラモノであるカメラの掃除、点検などをしている。全く「ぐうたら」ばかりでもなくて、たまに一週間ぐらい留守にするときもある。ぐうちゃんにきくと、そんなときは、全国を回って測量の仕事をしているという。一度、家に持って帰った測量の道具を見せてもらったけれど、すごく精密な望遠鏡という感じだった。レンズの中をのぞくと中にいっぱい目盛りが付いていて、ダイヤルでピントを合わせる。いかにもプロの人の道具みたいで格好いい。かといって、ぐうちゃんは、測量の専門家でもないらしい。僕の母は、ぐうちゃんのそういう落ち着かない仕事のしかたが気に入らないようだ。「ちゃんと就職して早く独立しなさい。そうして『いそうろう』から卒業しなさい。」といつも怒る。
当のぐうちゃんは、母に怒られても、「でも、まあもう少し。」などと訳のわからないことを言う。すると、母は今度は僕に向かって、「ぐうちゃんみたいな大人になってはだめだからね。」と言う。本当に文句ばかりだ。
そんな「ぐうちゃん」だけど、僕はぐうちゃんが大好きだ。ぐうちゃんの話は文句なしにおもしろいのだ。母は、「みんなほら話なんだからそんなのを聞いている暇があったら勉強していなさい。」と言うけれど、宿題をするよりよっぽどおもしろい。だから、僕がぐうちゃんの話を聞くときはたいていぐうちゃんの部屋に行く。

その日も、夕食の後に僕はぐうちゃんの部屋でほら話を聞いていた。
でっかい動物の話だった。
「悠君。世界でいちばん長い蛇は何だか知っているか。」
ぐうちゃんは、細い目をめいっぱい見開くようにして僕にきいた。それは、いつもおもしろい話をするときのぐうちゃんの癖で、だから、僕はぐうちゃんのその表情が好きだ。でも、今日は話のテーマがちょっと幼稚すぎる。とはいえ、宿題するよりはずっとおもしろそうだから、母に見つかるまでその話を聞いていることにした。
「アナコンダとかいうやつだね。アフリカの密林あたりにいる。」
「悠君は地理に弱いんだなあ。アナコンダがいるのはアマゾンだよ。現地の人はスクリージュとよんでいて、これはポルトガル語で水蛇という意味だ。長く太くなりすぎて蛇行するには地球の重力が負担になって水に入ったんだ。」
「泳いでいて出会ったら嫌だな。飲み込まれちゃいそうだ。」
「そう。本当に人間なんか簡単に飲み込んでしまう。生きている馬だって飲み込んじゃうんだぞ。」
ぐうちゃんの話はいつも怪しい。僕がおもしろがればいいと思っているのだ。
「そんなのうそだろ。だって馬の背は人間よりはるかに高いし、体重だって普通五百キロはあるって何かの本で読んだよ。アナコンダがいくら大きいといってもそんな大きな口は開けられないだろ。ありえねえ。」
「ありえねくないんだよ。」
ぐうちゃんは変な言い方をした。
「立っている馬をそのまま大口を開けて飲み込むわけじゃないんだ。まず馬の首のあたりにかみついて馬をひっくり返す。それから馬の体に巻き付いて馬の脚の骨をバキバキ折っていく。飲み込みやすいように全体を丸くしていくんだなあ。それから、ゆっくり、飲んでいくんだ。」
本当かなあ。力のこもった話し方を聞いていると、うっかりぐうちゃんのほら話の世界に取り込まれてしまいそうになる。でもその怪しさがやっぱりおもしろい。
「悠君。アマゾンの動物はみんな大きいんだ。ナマズもでっかいのがいるぞ。どのくらいだと思う?」
どうせほら話だから僕も大きく出ることにした。
「そうだね。じゃ一メートル!」
「ブップー。」
外れの合図らしいけど、まるっきり子供扱いだ。
「アマゾンでは普通に三メートルのナマズがいるよ。」
「うそだあ。ありえねえ。」
さすがに頭にきた。僕を小学生ぐらいと勘違いしているんだ。
「うそじゃないよ。口の大きさが一メートルぐらいだよ。」
ぐうちゃんはまた細い目になった。僕をからかって喜んでいる目だ。
「ふうん。」
なんだかばかばかしくなったので気のない返事をした。
「あ、信じてないだろう。じゃあがらっと変わって、きれいで小さい宇宙の話をしようか。」
ぐうちゃんは話の作戦を変えてきた。宇宙の話は好きだ。例えば宇宙には果てがあるのか、とか二重太陽のある星の話とかだ。ところが、ぐうちゃんの話は、地球の中の宇宙の話だった。
「北極には、一年に一度流氷が解けるときに小さな氷の惑星ができるってイヌイットの間ではいわれている。アイスプラネットだ。めったに現れないので、それを見た者はその年いいことがいっぱいあるといわれている。」
「童話か何かの話?」
「いや、本当にある話だよ。見ることのできた者を幸せにするという、地球の中にある小さな小さな美しい氷の惑星。いい話だろ。」
「やっぱりありえねえ。俺、風呂の時間だし。」
ぐうちゃんは続けて話したそうだったけれど、母親が風呂に入れと大きい声で呼んだので、それを口実に逃げることにした。ぐうちゃんは、やっぱり今どきの中学生をなめているのだ。

翌日、学校に行く途中で、同じクラスの吉井と今村に会った。初めはどうしようかと思ったけど、馬も飲んでしまうでっかいアナコンダや、三メートルもあるナマズの話はおもしろかったし、氷の惑星の話も、本当だったらきれいだろうなと思ったから、つい吉井や今村にその話をしてしまった。二人は僕の話が終わると顔を見合わせて、「ありえねえ。」「証拠見せろよ。」と言った。「そんなほら話、小学生でも信じないぞ。」そう言われればそうだ。だから、部活が終わって大急ぎで家に帰ると、僕は真っ先にぐうちゃんの部屋に行って、「昨日の話、本当なら証拠の写真を見せろよ。」と無愛想に言った。ぐうちゃんは少し考えるしぐさをして、「そうだなあ。」と言って、目をパチパチさせている。
「これまで撮ってきた写真をそろそろちゃんと整理して紙焼きにしないと、と思っているんだ。そうしたらいろいろ見せてあげるよ。」
むっとした。そんな言い逃れをするぐうちゃんは好きではない。なんかぐうちゃんに僕の人生が全面的にからかわれた感じだ。吉井や今村に話をした分だけ損をした。いや失敗した。僕までほら吹きになってしまったのだ。
それから夏休みになってすぐ、ぐうちゃんはいつもより少し長い仕事に出た。関東地方の各地の川の測量をするということだった。僕は人生を全面的にからかわれて以来、あまりぐうちゃんの部屋に行かなくなっていたから、気にも留めなかった。
夏休みも終わり近く、いつものように週末に帰ってきた父と母が話しているのが、風呂場にいる僕の耳にも入ってきた。
「僕たちは、都市のビルの中にいるからなかなか気がつかないけど、由起夫君は若いころに世界のあちこちへ行っていたから、日本の中にいたら気がつかないことがいっぱい見えているんだろうね。なんだかうらやましいような気がするな。」
母は、珍しくビールでも飲んだらしく、いつもよりもっと強烈に雄弁になっている。
「あなたは何をのんきなことを言っているの。由起夫が、いつまでもああやって気ままな暮らしをしているのを見ていると、悠太に悪い影響が出ないか心配でしかたがないのよ。例えば極端な話、大人になっても毎日働かなくてもいいんだ、なんて思って勉強の意欲をなくしていったとしたら、どう責任取ってくれるのかしら。」
父が何かを答えているようだったが、はっきりとは聞こえなかった。ただ、僕のことでぐうちゃんが責められるのは少し違う気がする。そう思うと、電気の消えたぐうちゃんの部屋が急に寂しく感じられてきた。

それから、ぐうちゃんがまた僕の家に帰ってきたのは、九月の新学期が始まってしばらくしたころだった。顔と手足が真っ黒になっていて、パンツ一つになると、どうしても笑いたくなって困った。
残暑が厳しい日だった。久しぶりにぐうちゃんのほら話を聞きたいと思った。またからかわれてもいい。暑いから、今度は寒い国の話が聞きたい感じだ。
ところが、ぐうちゃんの話は、でっかい動物のでも、暑い国のでも、寒い国の話でもなかった。
「旅費がたまったから、これからまた外国をふらふらしてくるよ。」
ぐうちゃんは突然そう言った。「でもまあもう少し。」にはこんな意味があったのか。ぐうちゃんはいつもと変わらずに話を続けている。それなのに、ぐうちゃんの声はどんどん遠くなっていく。気がつくと、僕はぶっきらぼうに言っていた。
「勝手に行けばいいじゃないか。」
ぐうちゃんは、そのときちょっと驚いた表情をした。何かを話しかけようとするぐうちゃんを残して僕は部屋を出た。
それ以来、僕は二度とぐうちゃんの部屋には行かなかった。母は、そんな僕たちに、あきれたり慌てたりしていたけれど、父はなにも言わなかった。
十月の初めに、ぐうちゃんは小さな旅支度をして「いそうろう」を卒業してしまった。
出発の日、僕は、なんて言っていいのかわからないままぐうちゃんの前に立っていた。ぐうちゃんは僕に近づき、あの表情で笑った。そして、なにも言わずに僕の手を握りしめ、力のこもった強い握手をして、大股で僕の家を出ていった。
「ほらばっかりだったじゃないか。」
「いそうろう」がいなくなってしまった部屋の前で、僕はそう思った。

ぐうちゃんから外国のちょっとしゃれた封筒で僕に手紙が届いたのは、それから四か月ぐらいたってからだった。珍しい切手がいっぱいはってあった。
「あのときの話の続きだ。以前若いころに、北極まで行ってイヌイットと暮らしていたことがあるんだ。そのとき、アイスプラネットを見に行こう、と友達になったイヌイットに言われてカヌーで北極海に出た。アイスプラネット。わかるだろう。氷の惑星だ。それが北極海に本当に浮かんでいたんだ。きれいだったよ。厳しい自然に生きている人だけが目にできる、もう一つの宇宙なんだな、と思ったよ。地上十階建てのビルぐらいの高さなんだ。そして、海の中の氷は、もっともっとでっかい。悠君にもいつか見てほしい。若いうちに勉強をたくさんして、いっぱい本を読んで、いっぱいの『不思議アタマ』になって世界に出かけていくとおもしろいぞ。世界は、楽しいこと、悲しいこと、美しいことで満ち満ちている。誰もが一生懸命生きている。それこそありえないほどだ。それを自分の目で確かめてほしいんだ。」
手紙には、ぐうちゃんの力強い文字がぎっしりつまっていた。
そして、封筒からは写真が二枚出てきた。一枚は人間の倍ぐらいあるでっかいナマズの写真。もう一枚は、北極の海に浮かぶ、見た者を幸せにするという氷の惑星の写真だった。
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Ice - planetMakoto Shiina My uncle "guu-Chan" is. His name is Yuki Tsuda Yukio, a 38-year-old. His pet peeve. It's my mother's brother. Always scolded by mother. Was settled in my house when I realised when I was a student, was travelling a lot of foreign. And that long "purposeless" because somewhere along the line "guu-Chan" that has become a nickname. But the guu-Chan is changed, she said somewhat happy. Look at it, my mother is also angry. But angry "guu, which Chan's favorite. "While I say the preparing for dinner from my mother a little weird. My House is on the outskirts of Western Tokyo, built by his grandfather's father. Old House, but guu-Chan 6 tatami mats between "isourou" and so guu-Chan is doing the "hardcore". He transfer Sendai and come home on weekends. Guu-Chan when says something must have peace of mind, say, father guu-Chan but schnorrer that looks like are welcomed. ぐうちゃんは、家にいるときはたいてい本を読んでいるか、唯一のタカラモノであるカメラの掃除、点検などをしている。全く「ぐうたら」ばかりでもなくて、たまに一週間ぐらい留守にするときもある。ぐうちゃんにきくと、そんなときは、全国を回って測量の仕事をしているという。一度、家に持って帰った測量の道具を見せてもらったけれど、すごく精密な望遠鏡という感じだった。レンズの中をのぞくと中にいっぱい目盛りが付いていて、ダイヤルでピントを合わせる。いかにもプロの人の道具みたいで格好いい。かといって、ぐうちゃんは、測量の専門家でもないらしい。僕の母は、ぐうちゃんのそういう落ち着かない仕事のしかたが気に入らないようだ。「ちゃんと就職して早く独立しなさい。そうして『いそうろう』から卒業しなさい。」といつも怒る。 当のぐうちゃんは、母に怒られても、「でも、まあもう少し。」などと訳のわからないことを言う。すると、母は今度は僕に向かって、「ぐうちゃんみたいな大人になってはだめだからね。」と言う。本当に文句ばかりだ。 そんな「ぐうちゃん」だけど、僕はぐうちゃんが大好きだ。ぐうちゃんの話は文句なしにおもしろいのだ。母は、「みんなほら話なんだからそんなのを聞いている暇があったら勉強していなさい。」と言うけれど、宿題をするよりよっぽどおもしろい。だから、僕がぐうちゃんの話を聞くときはたいていぐうちゃんの部屋に行く。 その日も、夕食の後に僕はぐうちゃんの部屋でほら話を聞いていた。 でっかい動物の話だった。「悠君。世界でいちばん長い蛇は何だか知っているか。」 ぐうちゃんは、細い目をめいっぱい見開くようにして僕にきいた。それは、いつもおもしろい話をするときのぐうちゃんの癖で、だから、僕はぐうちゃんのその表情が好きだ。でも、今日は話のテーマがちょっと幼稚すぎる。とはいえ、宿題するよりはずっとおもしろそうだから、母に見つかるまでその話を聞いていることにした。「アナコンダとかいうやつだね。アフリカの密林あたりにいる。」「悠君は地理に弱いんだなあ。アナコンダがいるのはアマゾンだよ。現地の人はスクリージュとよんでいて、これはポルトガル語で水蛇という意味だ。長く太くなりすぎて蛇行するには地球の重力が負担になって水に入ったんだ。」「泳いでいて出会ったら嫌だな。飲み込まれちゃいそうだ。」「そう。本当に人間なんか簡単に飲み込んでしまう。生きている馬だって飲み込んじゃうんだぞ。」 ぐうちゃんの話はいつも怪しい。僕がおもしろがればいいと思っているのだ。「そんなのうそだろ。だって馬の背は人間よりはるかに高いし、体重だって普通五百キロはあるって何かの本で読んだよ。アナコンダがいくら大きいといってもそんな大きな口は開けられないだろ。ありえねえ。」「ありえねくないんだよ。」 ぐうちゃんは変な言い方をした。「立っている馬をそのまま大口を開けて飲み込むわけじゃないんだ。まず馬の首のあたりにかみついて馬をひっくり返す。それから馬の体に巻き付いて馬の脚の骨をバキバキ折っていく。飲み込みやすいように全体を丸くしていくんだなあ。それから、ゆっくり、飲んでいくんだ。」 本当かなあ。力のこもった話し方を聞いていると、うっかりぐうちゃんのほら話の世界に取り込まれてしまいそうになる。でもその怪しさがやっぱりおもしろい。「悠君。アマゾンの動物はみんな大きいんだ。ナマズもでっかいのがいるぞ。どのくらいだと思う?」 どうせほら話だから僕も大きく出ることにした。「そうだね。じゃ一メートル!」「ブップー。」 外れの合図らしいけど、まるっきり子供扱いだ。「アマゾンでは普通に三メートルのナマズがいるよ。」「うそだあ。ありえねえ。」 さすがに頭にきた。僕を小学生ぐらいと勘違いしているんだ。「うそじゃないよ。口の大きさが一メートルぐらいだよ。」 ぐうちゃんはまた細い目になった。僕をからかって喜んでいる目だ。「ふうん。」 なんだかばかばかしくなったので気のない返事をした。「あ、信じてないだろう。じゃあがらっと変わって、きれいで小さい宇宙の話をしようか。」 ぐうちゃんは話の作戦を変えてきた。宇宙の話は好きだ。例えば宇宙には果てがあるのか、とか二重太陽のある星の話とかだ。ところが、ぐうちゃんの話は、地球の中の宇宙の話だった。「北極には、一年に一度流氷が解けるときに小さな氷の惑星ができるってイヌイットの間ではいわれている。アイスプラネットだ。めったに現れないので、それを見た者はその年いいことがいっぱいあるといわれている。」「童話か何かの話?」「いや、本当にある話だよ。見ることのできた者を幸せにするという、地球の中にある小さな小さな美しい氷の惑星。いい話だろ。」「やっぱりありえねえ。俺、風呂の時間だし。」 ぐうちゃんは続けて話したそうだったけれど、母親が風呂に入れと大きい声で呼んだので、それを口実に逃げることにした。ぐうちゃんは、やっぱり今どきの中学生をなめているのだ。 翌日、学校に行く途中で、同じクラスの吉井と今村に会った。初めはどうしようかと思ったけど、馬も飲んでしまうでっかいアナコンダや、三メートルもあるナマズの話はおもしろかったし、氷の惑星の話も、本当だったらきれいだろうなと思ったから、つい吉井や今村にその話をしてしまった。二人は僕の話が終わると顔を見合わせて、「ありえねえ。」「証拠見せろよ。」と言った。「そんなほら話、小学生でも信じないぞ。」そう言われればそうだ。だから、部活が終わって大急ぎで家に帰ると、僕は真っ先にぐうちゃんの部屋に行って、「昨日の話、本当なら証拠の写真を見せろよ。」と無愛想に言った。ぐうちゃんは少し考えるしぐさをして、「そうだなあ。」と言って、目をパチパチさせている。「これまで撮ってきた写真をそろそろちゃんと整理して紙焼きにしないと、と思っているんだ。そうしたらいろいろ見せてあげるよ。」 むっとした。そんな言い逃れをするぐうちゃんは好きではない。なんかぐうちゃんに僕の人生が全面的にからかわれた感じだ。吉井や今村に話をした分だけ損をした。いや失敗した。僕までほら吹きになってしまったのだ。 それから夏休みになってすぐ、ぐうちゃんはいつもより少し長い仕事に出た。関東地方の各地の川の測量をするということだった。僕は人生を全面的にからかわれて以来、あまりぐうちゃんの部屋に行かなくなっていたから、気にも留めなかった。 夏休みも終わり近く、いつものように週末に帰ってきた父と母が話しているのが、風呂場にいる僕の耳にも入ってきた。「僕たちは、都市のビルの中にいるからなかなか気がつかないけど、由起夫君は若いころに世界のあちこちへ行っていたから、日本の中にいたら気がつかないことがいっぱい見えているんだろうね。なんだかうらやましいような気がするな。」 母は、珍しくビールでも飲んだらしく、いつもよりもっと強烈に雄弁になっている。「あなたは何をのんきなことを言っているの。由起夫が、いつまでもああやって気ままな暮らしをしているのを見ていると、悠太に悪い影響が出ないか心配でしかたがないのよ。例えば極端な話、大人になっても毎日働かなくてもいいんだ、なんて思って勉強の意欲をなくしていったとしたら、どう責任取ってくれるのかしら。」 父が何かを答えているようだったが、はっきりとは聞こえなかった。ただ、僕のことでぐうちゃんが責められるのは少し違う気がする。そう思うと、電気の消えたぐうちゃんの部屋が急に寂しく感じられてきた。 それから、ぐうちゃんがまた僕の家に帰ってきたのは、九月の新学期が始まってしばらくしたころだった。顔と手足が真っ黒になっていて、パンツ一つになると、どうしても笑いたくなって困った。 残暑が厳しい日だった。久しぶりにぐうちゃんのほら話を聞きたいと思った。またからかわれてもいい。暑いから、今度は寒い国の話が聞きたい感じだ。 ところが、ぐうちゃんの話は、でっかい動物のでも、暑い国のでも、寒い国の話でもなかった。「旅費がたまったから、これからまた外国をふらふらしてくるよ。」 ぐうちゃんは突然そう言った。「でもまあもう少し。」にはこんな意味があったのか。ぐうちゃんはいつもと変わらずに話を続けている。それなのに、ぐうちゃんの声はどんどん遠くなっていく。気がつくと、僕はぶっきらぼうに言っていた。「勝手に行けばいいじゃないか。」 ぐうちゃんは、そのときちょっと驚いた表情をした。何かを話しかけようとするぐうちゃんを残して僕は部屋を出た。 それ以来、僕は二度とぐうちゃんの部屋には行かなかった。母は、そんな僕たちに、あきれたり慌てたりしていたけれど、父はなにも言わなかった。 十月の初めに、ぐうちゃんは小さな旅支度をして「いそうろう」を卒業してしまった。 出発の日、僕は、なんて言っていいのかわからないままぐうちゃんの前に立っていた。ぐうちゃんは僕に近づき、あの表情で笑った。そして、なにも言わずに僕の手を握りしめ、力のこもった強い握手をして、大股で僕の家を出ていった。「ほらばっかりだったじゃないか。」「いそうろう」がいなくなってしまった部屋の前で、僕はそう思った。 ぐうちゃんから外国のちょっとしゃれた封筒で僕に手紙が届いたのは、それから四か月ぐらいたってからだった。珍しい切手がいっぱいはってあった。「あのときの話の続きだ。以前若いころに、北極まで行ってイヌイットと暮らしていたことがあるんだ。そのとき、アイスプラネットを見に行こう、と友達になったイヌイットに言われてカヌーで北極海に出た。アイスプラネット。わかるだろう。氷の惑星だ。それが北極海に本当に浮かんでいたんだ。きれいだったよ。厳しい自然に生きている人だけが目にできる、もう一つの宇宙なんだな、と思ったよ。地上十階建てのビルぐらいの高さなんだ。そして、海の中の氷は、もっともっとでっかい。悠君にもいつか見てほしい。若いうちに勉強をたくさんして、いっぱい本を読んで、いっぱいの『不思議アタマ』になって世界に出かけていくとおもしろいぞ。世界は、楽しいこと、悲しいこと、美しいことで満ち満ちている。誰もが一生懸命生きている。それこそありえないほどだ。それを自分の目で確かめてほしいんだ。」 手紙には、ぐうちゃんの力強い文字がぎっしりつまっていた。 そして、封筒からは写真が二枚出てきた。一枚は人間の倍ぐらいあるでっかいナマズの写真。もう一枚は、北極の海に浮かぶ、見た者を幸せにするという氷の惑星の写真だった。
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Ice - Planet
Shiina Makoto my uncle called "even-chan". His name is Yukio Tsuda, thirty-eight years. He hanger. It is a younger brother of my mother. Always it has been angry mother. It seemed was traveling a lot at the time to foreign students, when I noticed it had settled in my house. And, because a long time has been "lazy", it had unawares become a nickname of "even-chan". But, in the even-chan unusual people, but somehow joyful When it is said so. My mother also is angry to see it. angry but "this, favorite food. of even-chan" while saying Nante, is it because they were the preparation of rice mother also little changed. My house is there on the outskirts of west of Tokyo, was built by the father of the grandfather. And though it is an old house, there is a period of six tatami mats that even-chan can be "sponger", where even-chan have "lazy". My father was in the Sendai in bachelor, come back on the weekend. Because peace of mind when it becomes necessary and something heavy lifting even-chan are, to say, my father seems are welcome that the even-chan is a freeloader. Even-chan, that you are reading the most books when you are in the house, the camera of cleaning is the only Takaramono, have a such inspection. All is just not also "lazy", it is also when you want to occasionally away about one week. When I listen to even-chan, is such a case, and that is the work of surveying and around the country. Once, but showed me a tool of survey that returned to bring to the house, it was felt that the very precise telescope. To have a full memory during Excluding the inside of the lens, to focus on the dial. Indeed it cool With like professional of the human instrument. To say whether, even-chan, seems not a professional survey. My mother is like the way of such restless work of even-chan does not like. "Please properly independent fast and a job. Then please graduated from the" hanger "." And always angry. Question even-chan, even angry mother, say that "But, well a little more." I do not know such as the translation. Then, the mother in turn towards me, say, "I'll useless Become a even-chan like a adult.". I just complain really. It 's such "even-chan", I would love to even-chan. Talk of even-chan 's funny without complaint. Mother, and but say the "Make studying if there is spare time you are listening to such of from'm all tall tales." Defintely interesting than homework. So, I go to the most even-chan of the room when I hear talk of even-chan. That day also, to me after the dinner had heard the tall tales in a room of even-chan. It was a huge animal story. "Yu-kun. Or. Longest snake in the world know somehow" even-chan, heard me so as to open one's eyes because fill the narrow eyes. It is, in even-chan of the habit of when the always funny story, So, I like the look of even-chan. But, today the theme of the story is too little childish. That said, because it is much more interesting and rather than homework, it was decided to have heard the story until you find the mother. "It's a guy or something Anaconda.'re In per African jungle." I wish, "Yu-kun I'm weak in geography. I'm Amazon's Anaconda are. Local people are reading and Sukuriju, this is water snake in Portuguese It means that. To meander too thick long I do Earth's gravity has entered the water become a burden. " and "Do not hate you encounter in swimming. It's would be swallowed likely." "Yes. really human softening easily swallowed would.'ll I will swallow Even horses alive. " talk of even-chan always suspicious. I am I have thought that I should scree interesting. "That's probably a lie. Because horseback is to much higher than human beings, and I read in the book of something I some weight Even usually five hundred kilometers. Anaconda is much greater with such a big mouth to say can not be opened will. Impossible. " "impossible Ne Ku not do it by." even-chan was the strange words. It does not not mean swallow and open as it is the large the horse standing ". First, bite around the neck of the horse to upset the horse. Then go broke snapping the Umanoashi bones wrapped around the body of the horse. As easy to swallow and I wish I'm going to round the whole. Then, slowly, I go drinking. " truth or I. When I heard the muffled talk of power, it would be likely to be inadvertently incorporated into the world of tall tales of even-chan. But that is suspiciously is still funny. "Yu-kun. Amazon animal'm all big. It'll have the catfish also big is. Which much he I think?" was it because anyway you know talk to that I also come out big. "Yeah. Well one meter!" "Buppu." Though seems cues off, it's Marukkiri children treatment. "I in the Amazon there are normally three meters of catfish." "Usodaa. isnt." It was truly pissed. I do have mistaken about my elementary school children. "It's about a one meter'm not yo. Neck size lie." even-chan has also become narrow eyes. It's eyes are willing to make fun of me. "Bad luck." It was a tepid response since has become somewhat ridiculous. "Oh, I believe would not. So in Gara changed, you can either try to talk of clean and small universe." even-chan has been changed the strategy of the story. Story of the universe likes. For example, whether there is a result in the universe, star of story Toka with double sun Toka. However, talk of even-chan, was the story of the universe in the earth. "To the North Pole, it's. Ice Planet is said among Inuit I can small ice planet when solved once drift ice in one year. Since rarely appear, is a person who saw it that the year good are said to be full there. " "story of something fairy tale or?" "No, I'm a story really. is that happy person who was able to see, small little beautiful ice of the planet that is in the earth. good you'll talk. " "I thought unlikely. I,'s a bath of time." EVEN chan but was likely to talk in a row, so he called in the big mother is put in a bath voice, it was decided to escape it as an excuse. Even-chan, you are licking still nowadays of junior high school students. The next day, on the way to school, I met Yoshii and Imamura of the same class. And I thought to be what to do at first, the horse also huge Anaconda and that would drink, to talk of catfish, which is also three meters was interesting, even talk of ice planet, because I thought Na would be beautiful if it was true, with the Yoshii Ya I had a story to Imamura. Two people can be looked at each other when the end is my story, he said, "Impossible." "I Show me the evidence.". "You know such talk, it'll not believe even in elementary school." It's likely if say so. So, if you go home on the fly over the club, I went to the room of even-chan first and foremost, "yesterday's story, we Show me a picture of the true if the evidence." And said brusquely. Even-chan by the gesture to think a little, and said, "I wish it so.", It is made ​​to crackling eyes. "Failure to Organize this to the photos you've taken soon properly paper baking, I'm thinking. Soshitara and I'll variety show." was disgruntled. Even-chan to such a subterfuge do not like. It is a feeling that my life has been fully teased softening even-chan. We were harmed by the amount you have to talk to Yoshii and Imamura. Yea it failed. It has become a big mouth to me. Then immediately turned to summer vacation, even-chan went on a little longer work than usual. It was to be that a survey of the river in the Kanto region of the country. Since I been fully teased the life, because I no longer go to the room too much even-chan, it did not bear even to care. Summer vacation near the end, that the father and mother are talking came back on the weekend as usual, it came to my ears are in the bathroom. "We, I do not notice quite Since you're in the city of building, from Yukio-kun was going to around the world to young, I guess that you do not notice If we had been in Japan are full visible. Somehow envy Na. "I feel is like mother, it seems drank in unusual beer, it is more intensely become eloquent in than usual. "You have to say that what you easygoing. Yukio is, and forever have seen are you carefree living doing oh well, in no way worried about or not out bad influence on Yuta . For example extreme story, I say not have to work every day even in the adult, if were to go to eliminate the willingness of the study, thinking Nante, How I wonder me to take responsibility. " father that said something Although was like, it was not heard clearly. However, the even-chan is accused by the I feel like a little different is. If you think so, electricity disappeared even-chan of the room has been felt suddenly lonely. Then, to the even-chan also I came back to my house, in September of the new school year is was around a while began. Face and limbs is turned to black, when it comes to pants one, was troubled Become want to laugh really. Lingering summer heat seemed tough day. I thought I want to hear the tall tales of even-chan for the first time in a long time. Also, good to be teased. Since hot, now I'm feeling that you want to hear talk of a cold country. However, talk of even-chan, but of huge animal, but of hot country, it was not even in the cold country of story. "Because travel expenses is accumulated, it'll come to dizzy in the future or foreign." even-chan said suddenly so. Whether there was such a sense to "But Well a little more.". Even-chan has continued to talk unchanged from the usual. Yet, the voice of even-chan will become more and more distant. If you notice, I had to say bluntly. "It's not good if you go without permission or." even-chan, was at that time a little surprised look. I was out of the room, leaving the even-chan tries to Speak something. Since then, I did not go in again even-chan of the room. My mother, in such us, but had or hurry or amazed, my father did not say anything. At the beginning of October, even-chan had graduated from the "hanger" by a small journey Shitaku. The day of departure, I was standing in front of know what to do, not remain even-chan Say What. Even-chan close to me, laughed at that expression. And what also clenched my hand without saying, with a strong handshake, which muffled the force, and went out of my house in stride. and "Look or not it was just." "hanger" in the front of the room that had gone is, I thought so. I had received a letter I in a little swanky envelope of foreign from even-chan, then was from standing about four months. Rare stamps had been full crawl. "It's a continuation of the story of that time. Previously young, I have a thing that has been living with the Inuit to go up to the Arctic. At that time, I will go to see the ice planet, and it is said to Inuit became friends came to the Arctic Ocean in the canoe. It will ice planet. seen. It's ice planet. I it was really floating in the Arctic Ocean. It 'was beautiful. Only those who have severe natural to live can be in the eyes, and the other one One of Na's universe of me, and I'll I thought. do it height of about building on the ground ten-story. And, the ice in the sea, I want you to also look at someday in more and more big. Yu-kun. a study in young and a lot to, to read the full book,'ll funny when we go out to the world and become full of "wonder my head." The world, fun, sad thing, is full filled with beautiful things. Everyone is hard alive. It's about impossible precisely it. I do want it for yourself. " The letter, strong character of even-chan was chock full. And, photos from the envelope came out two. Huge catfish photo of a piece is there about human times. One the other, floating in the sea in the Arctic, was the ice planet photo of that happy to see person.






































































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"The ice at the planet's uncle called me ぐうちゃん Makoto Shiina stress." Yukio Tsuda, his name at the age of 38. It is he. My mother's brother. You are always my mother angry. By the time of the students like to travel in foreign places, when he came to my house to live. For a long time, and "lazy", "ぐうちゃん soon nicknamed". But lost the odd manI will be happy. My mother was angry to see it again. But this is the excuse of "angry." I say, get a meal is just changing the mother. At my home in the western suburbs of Tokyo, was built by his grandfather. Old house, but can be "lost" means that, while there were six tatami mats, lost in the "lazy". My father is away from home in Sendai, weekend is coming back.Rock, heavy work that needs some relief when I told my dad, he's like to welcome to do so. At the rock, or read the most books in the house when the camera is the only treasure, cleaning and inspection. Not only "lazy", even when away from home in a week or so. To be lost, and when the country is circling the surveying work.Once home to see the back of surveying instruments, but I feel that was very precise telescope. And look into the lens with a full mark in the dial to focus. Just like a pro tools. However, the survey of professional rock is not at home. My mother, a kind of uncomfortable silence as I don't like the style of working. "Good job early independence.You graduated from so called "means". Be angry all the time. The silence of the angry mother, "" Oh, a little bit more. I don't say that. This time, the mother, "I don't like adults lost." And say. Really complain. "But," so ぐうちゃん skin I love my daddy. The story is interesting in favor of it. My mother"Tall tales from the time that I heard was studied." And say, but much more interesting than doing homework. So, when I listen to rock, I usually go to the room of rock. Well, the day after dinner, I heard one of the little bunny room tall tales. The story of big animals.
「 Yu. The longest snake in the world I know? " The rock atAsked to me as his narrow eyes open wide. It is always interesting to talk to ぐうちゃんの habit, so I like the look of my skin. Even today, the story of a little too childish. However, much more interesting than doing homework, and my mother found it is to hear that. That is what they
「 anaconda. About the African jungle. " I
「 Yu you weak in geography.Anaconda is the Amazon. The local people at oblige, this means that the water snake in Portuguese. Too fat to walk for a long time I went into the water in the earth's gravity burden. " I dislike you meet in swimming. So I swallowed. "
「. I really would be easily swallowed. I swallowed up a live horse poo. " At the rock's always weird story.
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